フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん(前編)

VOICE

FLAT STAND管理人の和田(ここでは、しげをと呼ばれている)が『たまれ』に出入りするメンバーに話を聞いてまわるシリーズとしては第6弾!!  今回はFLAT STANDを運営する株式会社シンクハピネス  LIC訪問看護リハビリステーションの精神科訪問看護の責任者 谷川寛郎さんです!
府中市在住の看護師である谷川さんってどんな人なのか、どういう風に出会い、どういう想いで入職したのか…聞いていきたいと思いますー

※谷川さん → 谷、F LAT STAND 管理人 和田 → W

そもそも谷川寛郎が歩んできた看護師としてのキャリア

 – 社内の人には恒例の雑なフリからはじまるんですけど、自己紹介いいですか?

谷:LIC訪問看護リハビリステーションで、精神科訪問看護の責任者をやってます谷川です。今、LICでは月・火・木・金の勤務で、水曜日だけコンサルの仕事で別の企業さんの運営する精神科訪問看護にも行かせてもらっています。

 – 谷川さんが、看護師になってから、LICに入って今に至るまでの話を聞けたらなぁと思うんですけど…

谷:なるほど。私は、「看護師しかやったことがない」んすよね。一番はじめのキャリアでいうと、就職してすぐに「外科」に配属になったんですよ。

 – あ、精神科スペシャルだから意外っちゃ意外ですけど「外科」スタートだったんですね?

谷:そうなんです。で、「外科で一番になろうと思ったんですよね。だから、入って部長になって「医療変えてやるんだ」って感じでいたんですよ、その頃から。実際に何をもって医療を変えるっていうのはないんですけど…。でオペ室で4年間勤務してたんですけど、自分が井の中の蛙 だっていうことに気づいて、海外で看護師になろうと思ってカナダに行ってたんです。

 – 海外行ってたんですね??すでにこの時点で情報過多ですけど…。

谷:ですよね(笑)
お金貯めて帰ってくるんですけど、外国の方が来るようなところで英語使いながら看護業務にあたるってことで、東京のとある医療センター勤務をしてたんです。そこで一番わかったことなんですけど、「ホントにいわゆる公務員みたいな仕事があってない」んですよね、私。上から「これやれ」「いいからやれ」っていうのが本当にダメで。DOしろっていわれてもYes, sirみたいなことできなくて、「なんで??」ってなっちゃうんですよ。

 – 今の谷川さん知ってるから絶対合わないだろうなぁって思いますもんね(笑)。

谷:そうなんです、絶対合わないんですよ!それでも頑張って3年やるわけなんですけど…本当に嫌で…
そこでも変わらず「外科」でそれ自体は楽しかったんですよ。そこで、外科的な対応をしていると、そこに精神疾患の方がいて対応に苦慮することが多々あるわけですよ。処置をどんどん進めたいけど、そこで手を止めなきゃいけないどころか、その方の対応もしなきゃいけなくなるし…もうその頃は「精神看護」なんて全然知らなかったからもう嫌だったんですよ。

 – 外科的な処置をするっていう場面においては、もう阻害要因でしかないわけですもんね

谷:いや、ホントそうで。例えば、手術しててお腹を開いてる人とかが「すいません、お腹開いちゃいました」って。「いや、開けたんだよ!!!」ってなったり。今でこそ笑い話になりますけど、もうその頃は嫌でしたねー。それでだましだまし対応していたんですよね。で、外科にいてもオペ室に計9年くらいいたんですけど、業務上の番狂わせ的なことが起きるのって精神疾患の方だったんすよ、結局。オペ室にしても局所麻酔の注射すると130dBくらいデッカい声で叫んだり…で結局中止になったり。だとしたらもう精神のこと、ちゃんと知った方がいいんじゃないかっておもいはじめたんですよね。

 

精神科看護との出会いと、転換のきっかけとなる2つの出来事

で、結婚するってタイミングで井の頭病院に入るわけなんです。
トータル9年間、精神科で看護師勤務をするわけなんですけど、最初の5年はめっちゃおもしろくなかったんですよ。「オレの培ってきた知識や経験っていつ使われるの?」ってめっちゃ思ったんすよ。外科的な知識とかオペ室とかにいたので、点滴技術やオペの準備をしたりとか、それなりにできる立場にもいたし、自信もあったからこそなのかもですけど、「散歩って何??」「お茶出して帰ってくるって何??」ってマジで意味わかんなかったし、生活保護とかのこともわかんなかったし…それを5年続けていたんですけどその時は「いつ辞めよう」ってずっと考えてましたねー

 – 5年って結構長いすね。

谷:そうなんですよ!だから結構辛くて。

 – でもなにか変化があったわけですよね??その状況を変えるなにかきっかけ的な。

谷:そう。それ大きく2つあって。1つが、こどもが3歳くらいになったときに「パパってなんの仕事をしてるの?」ってふと聞かれたんですよ。ちょうどそのとき急性期病棟にいたんで、隔離拘束とかをバシバシやってたんですよ。で、ホントに辛い時期が続いてたので感情としては拘束して「よし!」ってなる部分もあったんですよね、きっと。

 – そりゃ気持ちとしては出ちゃいますよね。急性期だと目の前でさっきまで暴れていたり、場合によっては自分たちの安全も脅かされるような場面もありますよね?

谷:ザラですね。で、そんなときにこどもから真っ直ぐな問いをもらったときにドキッとしたんですよ。ぼく、答えられなかったんですよ。「あれ、オレ、なんの仕事してんだっけ」って。それで、そのタイミングで2つ目なんですけど、新人さんから「私、拘束するときに涙がでそうになってできないんです」って言われて理由を尋ねたんですよ。「こんなの、人権無視してるし、可哀想すぎて私できないです」って言われて、青天の霹靂でハッとしたんですよね。そんなこと思ってなかったんですよ。「オレはこの人たちを社会にださないよにやってる」くらいの認識になっちゃってたからホントに雷落ちたくらいの出来事だったんですよね。

 – なんか、その2つの出来事が近しいタイミングで起きたってのも偶然というか必然というか…

谷:それからその人のエピソードをすごく聞くようになったんですよ。小さい頃からの話。自分だって小さい頃があって辛い時期だってたくさんあって、カルテにはないけど、それを目の前の患者さんに対しても小さい頃からのエピソードをとにかく聞くようにしたんです。で、いろいろ試行していったりしているうちにあるとき、「同じ人間なんだ!」って当たり前のことに改めて気づくわけですよ。
そこからはとにかくおもしろくて。そのー、何かしてあげたいとかではなくて、「この人がありたい自分になるの」ってどう関わったらいいんだ。その人が嫌だったり、害だと思っていることってそもそも治療じゃないんじゃないかって。
ちょうど6年目くらいのときに身体拘束を減らしていこうって流れがあって、それもあって積極的に関わり方を変えていくのといっしょに、拘束をできるだけなくしていくみたいなことを病院お中でもうやっていたんですよね。でも、ぼくやり過ぎちゃうこともあるから、「それはちょっと…」と止められながら、「なんでだよ!はすした方がいいじゃん!」っていう部分もあって。
でもやっぱり病院て、先生がいて、やっぱりなかなか思うようには動けないし、動かすことも難しい部分もある。じゃぁどうしようっていうことで、大学の医療経営学科に行くわけなんです。
病棟内の改革とかもしたいからどんな条件でもいいから「課長にしてほしい」って言ってみたりもしてて、で、「課長になるにはどんなに最短でもあと5年かかる」って言われて次の日に辞表を出すって感じだったんですよねー。

精神科の「訪問看護」との出会い。そしてFLAT STANDへ

 – そこから精神科の訪問看護との出会いがあるんですよね?

谷:そうです。コンサルしようかな、とか、事業立ち上げようかとかも考えてはいたんですけど、前職場の訪問看護に入らせてもらって。そこはホントに凄くて。今まで自分が13年間やってきたことだったり、精神科訪問看護をしてきた8年間がぶっ飛ぶというか、知識とか考え方とか…もう衝撃を受けたんですよね。今でもホントにスゴイと思ってます。で、そこで5年間働かせてもらっていて、ふと「なんでこんな頑張って杉並に貢献してるんだろう?」ふと思ったんですよね。それで府中で仕事探してみようかなーって思って少しふらふらしていたときに「たまいまマルシェ」で平田さん(※)に出会ったんですよ。

 – 奥さんに「なにナンパしてんのよ」って言われたやつすね!

谷:そう(笑)。もともと北海道の「べてるの家っていうところに1泊で行ったことあって…

 – そうなんすね!わかりますよ。

谷:まちで取り組んでいる感じすげーなーって思ってて。で、そんなまちづくりみたいな考え方でやってるところなんて近くにはないよなーって思っていたら、府中市に、自転車で7、8分のところにあったっていう。

 – まさかの近さですね!

谷:そうなんすよ。これは運命じゃね?って思って。で、FLAT STANDに行ってみて、何回かやってないってこともあって。初めてカフェがやってるときに入ったら、しげをさんがいたんですよね。

 – あーはいはいはい(笑)

谷:なんて熱量の強い人だって思ったんですよ!
でも、しげをさんて初めましての人に熱量って出す人なのかな?って疑問にも思うんですよね。

 – 基本は出さないですよ!!

谷:そうですよね!?

 – 相手の温度感と深度みたいなものに合わせてるって感じですよね。

谷:そうですよね??だから、あの場面でそうやって熱量をだしてくれたのってなんかあったんだろうなって。

 – だからそれって、ほんと感覚に近いんですけど… 話していてウワベだけの人だったらウワベだけの話をしていた方が楽だし、1回軽く話して、そこであっさりだとしてもまた何年かわからないけど2周3周してまた出会えばいいって思うし。だから、きっと谷川さんがそもそもこっちに問いを投げてきているわけじゃないですか、どんな球が帰ってくるのかなって。

谷:そうですけど、そしたら帰ってくるボールがハンパない感じでストライクゾーンに来るから。で、面接してもらいたいってなったんですよ。それでLIC訪問看護リハビリステーションも含め、「たまれ」も案内してもらったんですよ。

 – だから、話している中で本気度を感じたんでしょうね。口では言うけど実体が伴ってない人ってたくさんいるじゃないですか、虚像というか。で、実際何回も来てるっていうのってやっぱ場を背負っている側からするとやっぱりパワーありますよ。だって、こんな場所っつたらアレですけど多磨霊園ですよ??

谷;たしかに。今訪問回ってても思いますけど、まだまだ知らない人多いですもんね。
そういう意味で、私ももっといろんな人と出会ったり、知ってもらったりする過程の中で、自分自身が経験してきたことや知識なんかも、自分のまちに還元したいっていう気持ちがすごくあるんです。

ふつーが苦手な2人の対談風になりまして…

 – ちょっと話が戻るんですけど、看護師になって「外科で一番になる」とか「科長にしてくれ」みたいのって、みんながそうじゃないですよね?そのあたりのマインドってどこから来てるんですか?

谷:僕、ふつーって嫌なんですよね。100人いたら100人中の1人だからアナタじゃなくてもいいって、なんか嫌で。よく「ギターも弾くし、他にもいろいろあるんだから仕事以外でもいんじゃない?」って言われるんですけど、やぱり仕事する時間って長いじゃないですか。人生の半分くらいある時間を適当にって感じができないんですよね。なので自分の決めた領域の中で1番になりたいし、そこを楽しみたいっていうのはあるんでしょうね。なんか、自分が死ぬ時に「楽しかったなー」ってなりたいんですよねー。

 – (笑)。結構尖り具合って部分だと私も近しい部分があるのかもしれないですけど、ふつーのできないとか空きちゃうとかあるので。私の場合は、看護師でも専門的なスキルをもっているわけでもないので、谷川さんみたいに突き抜けたい欲求みたいのはないんですよね。いつも言ってる陰でニヤニヤしてるくらいでいいんですよね。

谷:なるほど(笑)!そうなんすねー

 – だから、仕事とかもやりたいこともやれた方がいいってのもあるんすけど、どうせ長い時間やることなんだからやっていることを好きになった方がいいって思っていて、やりたい場所だったり、やりたい人と何かを組めた方がいいと思ってるんです。私たちもあとどれくらい時間が残されているかって感じじゃないですか。で、死ぬ時も谷川さんみたいに「やりきったなー」って感じよりも、「あぁあれできなかったなぁ」ってニヤニヤしてるくらいの感じがいいなぁって。なんか感覚は似ている部分はありつつ、ポイントポイントで違って面白いなぁって(笑)
で、谷川さんって熱量みたいなものも強いじゃないですか?なので、外科でも、精神でも突き詰めっていくと既存の枠に収まりきらなくなったりとこもするっすもんね。だから、慢心しちゃうことがなくて突き進めるんだろうなぁって。そこって自分でやめちゃったら終わりじゃないですか。

谷:そうなんですよ。ADHDなんで(笑)

– (爆)

前編の今回は谷川さんの看護師としてのキャリアや、そのキャリアの中でも大きな転換点となっているあたりを中心に聞いてきました(情報量多かったので省略もしてますが)。中編では、谷川さんが考える「地域」みたいなものや「まち」っていうものがどう見えていて、FLAT STANDはどうみえているのかってあたりを、ゆらゆら寄り道しなが聞いていけたらなぁいけたらなーと思ってます。

※LIC訪問看護リハビリステーションでは2024年3月31日現在、精神科訪問看護のスタッフを絶賛募集しています。ご興味のある方は、オンラインでも採用説明会があったりもしますので、申し込みフォームからお問い合わせしてみてくだいね!!また、一度、谷川さんやFLAT STAND 和田に話聞いてみたいって方は、FLAT STAND のinfoメールに、聞いてみたいことを記入の上、連絡してみてくださーい!!( お返事に時間がかかることもありますのでご了承ください)

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『the town stand FLAT (FLAT STAND)』
2016.6月にOPENしたコーヒースタンドとコミュニティスペース機能をMIXした「まちのセカンドリビング」を目指したコミュニティカフェ。まちに暮らす人が1杯のコーヒーやワークショップなどのイベントを通じて、人やコトに出会い、関係性をつくり育んでいくための出入り口の役割を担うべく、さまざまなな活動を展開中。
運営は、訪問看護ステーション/居宅介護支援事業所を運営する株式会社シンクハピネス

フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん(前編)
フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん(中編)
*フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん(後編)

◆過去のインタビュー記事◆

フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん
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