フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん(中編)
「LIC訪問看護リハビリステーション」の精神科訪問看護 責任者の谷川寛郎さんのインタビューも中編!前編は、看護師としてのキャリアとその中にある転換点みたいな部分と合わせて、谷川さんの信念みたいなものも見え隠れしてた気がしています。中編では、そんな谷川さんには「シンクハピネス」や「FLAT STAND」がどうみえていたのかってあたりを伺えたらと思ってまーす。
谷川さんが考える「地域」とか「まち」って
– 前編で「ベテルの家」の話がでましたよね。わたしもちょっとだけ知ってる程度なんですけど、谷川さんは、精神疾患のある方をまちで支えるっていうか、まち全体がなんやかんや住みやすいみたいな感じの部分のことをいってるなのかなぁって理解をしているんですけど、「まち」とか「地域」みたいなことをどう捉えて、「ベテルの家」になにをみてるのか、みたいなことを教えてもらってもいいすか。
谷:「ベテルの家」で衝撃だったのは、『いわゆる利用者さんとか精神疾患をもっている方をまち全体でみている』っていうことなんですよね。例えば、コロッケ屋の前でギャーギャー泣いて「あ゛ーっ」叫んでいる人がいて、コロッケ屋のおばちゃんが「大丈夫?」って話しかけてコロッケあげて食べながら家に帰る…みたいなことがあって。で、本人が少しよくなってからおばちゃんに「ありがとう!」って言って100円支払っていく…みたいなことがある。で、そこでは何をしてるかっていると「ベテルの家」の会議にコロッケ屋のおばちゃんも参加したりして、「こういうことよかったよね」とか「こういうこと不安だな」とかを話しているんですよね、日常的に。
– 素敵ですねー。と同時に、なんかいくつかの地域が頭に浮かんだりもしますねー
谷:昔は近所にいたじゃないですか?言い方アレですけど変な人みたいな…。そういう人も近所のおっちゃんたちが、「あのにいちゃん変なとこもあるけど、いいとこあるからよろしくやろうぜ!」とかそういう空気感ってあったじゃないですか?そういう空気感って現代だったり、東京だったりだと減ってきちゃってると思うんですけどやっぱりそういうのいいなぁって思うんですよねー
– 志村けんが「変なおじさん」ってやってた感!なんかかわいげがあったり根はいいやつ的な…
谷:そうそう!
で、「ベテルの家」で1つスゴイのは、そういう精神疾患ある人に仕事をつくっているってことで、私そういう部分まだまだ詳しくないんですけど、そういうことができるんだよっていうことを支援者として理解しておきたいし、支援者間でも共有できたらいいなぁって思っているんですよね。
「たまれ」界隈やシンクハピネスに感じたこと
-そういう「ベテルの家」をみて感じていた谷川さんには、この「たまれ」界隈はどうみえてたんですか??私含め、中にいるような人はもうその視点ではみえないので…
-まぁまぁ、『 life design village 』って言っちゃってますからね。でも、自分たちもすごく「まちづくり」みたいなことを掲げてやっているっていうわけでもない部分が強いですよね、もともと「村づくり」っていう言い方はしていましたけど。ただ、自分たちの専門領域の中でできることに限りがあることだけはわかっていて、自分たちでは手の届かない人たちにリーチできる人たちに関わってもらうっていう意識はしてましてよね、FLAT STAND立ち上げる前から。例えば、「図工って本質的だな」って思っていて、図工の授業とかではなくって「図工ってこういうことだよね」っていう部分てどんな仕事にも根底に関わることだったり、やっぱりいろんなことを進めるうえで「学生」っていう部分も大事になるよねーって思っていて。で、実際どれくらいリーチできてるのっかって課題はもちろんあるんですけど、少なくとも「ここにいる」ってことだけでも意味があるって思っているんですよね。
谷:そこにも僕はすごく可能性を感じていて。で、びっくりしたのは精神科看護がないっていうところだったりもするんですよね。だからこそ、私の活動や専門性がマッチングするんじゃないかなって思っているんですよねー
↑はもう5年くらい前にイメージを膨らました「10年後のたまれ像」のデザイン
-たしかに。「精神ないんかい?」っていう感覚って私も実は持っている部分はあって。ていうのが、FLAT STANDにくる方の中で一部の人はなんらかの疾患を持ってる人がいて。それは少なくとも自分で言ってくれる人もいるので具体的にわかるんですけど。そこで私が話を聞いてできることもあれば、どこかにつながないと…ってときにめっちゃ探すし、人伝いに聞いてもらったりっていう日常は現在進行形でありますよねー。ただ、自信をもって接続しきれてない感があったんですよ。子育てとか、そういう部分はママさんのつながりとか行政関連とか含め、信頼筋に相談させてもらって、みたいなことはあるんですけど、精神的な疾患についての相談先って実は困っていたんですよね、潜在的に。だからこそ、谷川さんがはじめてFLAT STANDに来てくれた時に話が盛り上がったっていうのは私自身のもっている課題感も解決の性を感じたって部分もあるんでしょうねー
谷:そういっていただけるとうれしいですね。で、わたしもこのまちを精神疾患に強いまちにしたいわけではなくて、私がシンクハピネスの好きなところは、『府中市に住んでいたら「医療」や「介護」もなんとなくよくなっている』っていう部分で、ガチガチでよくしていくっていうんじゃなくて、「気づいたらよくなっているよな」っていう考え方が、私が思い描いていることとフィットしていて、「マジで??」って思ったんですよねー。そういうことがきっと「ベテルの家」とシンクハピネスだったり、「たまれ」界隈の空気感を重ねてみているんですよねー
– これめっちゃタイミングだなーって思うっすよね。『ここに暮らす人と医療と福祉がいい感じになっている』っていうことを掲げたのって2年前くらいですからね。それまでは「医療・福祉と住民の懸け橋になる」って言ってたわけで。これ、しばし違和感をもっていたけどようやく言語化したんですよねー。「懸け橋」って言ってる時点で境界線つくってるのどっちやねん!!って活動してく中で理解をしていったんですよね、きっと。
谷:「懸け橋」だったら来てない確率高いですね(笑)タイミングってめっちゃ大事!!
それで、やっぱり場所をもっているっていうのは、めっちゃ強いんですよねー。今は精神科訪問看護は私1名ですけど、これから増えて来るメンバーの得意なところをうまく出していけたらもっと可能性が広がってくるだろうなーって思うんですよね。
入職して感じる、シンクハピネスのこと
– そんなことを感じながら実際入職してどれくらい経ちます?
谷:2023年2月ですね。なのでようやく1歳になりました(笑)。※インタビューは2024年2月
– どうすか?いいことも嫌なことも含めて(笑)
谷:やっぱりネットワークがありますよね。そこにはすごい可能性を感じますよね、精神科につながるって部分でも。で、僕が実際に利用者さんというか、支援に関わらせてもらっているケースだと、もちろん、私が営業している中でつながっていくっていう部分もゼロではないですけど、実際どういうところからの相談で支援につながっているかっていったら、地域包括支援センターとか….病院じゃないっていう(笑)
-通常だとどういうとこが多いんでしたっけ?
谷:病院、クリニック、保健センターが主なとこですね。
代表の糟谷さんの知り合い、FLAT STAND、地域包括支援センター、身体の訪問看護でお世話になっているケアマネさんとか。通常の流れでの依頼がほぼなくて、自分の経験でいったらウルトラC的な依頼のルートがほとんど、って感じなんですよね。今までは精神科訪問看護にリーチできていなかった人たちにも知ってもらうことができるっていう可能性がめっちゃありますよねー
– LIC訪問看護リハビリステーションで、2023年12月から「精神科訪問看護」をスタートですよね?私は通常の相談の流れをあんまり理解していないので教えてもらいたいんですけど、通常はどういう風に依頼がくる感じなんですか?
谷:病院からもらって結果を出して、次の相談もココにしてみようっていう流れになりますよね。現場の支援はもちろんなんですけど、計画書や報告書もしっかり病院にも報告して、介入の目的や関わり方、そのプロセスみたいなものもお伝えして共有していくような感じですかね。
– これ、私の素人感覚ですけど、紹介というか訪問看護とのマッチングを失敗したときの紹介先というか通常で言う病院側のリスクがめっちゃ高い気がしますもんね、身体の方と比較しても。語弊もあるかもですが、たぶん変なとこだったら本人もその環境もめっちゃ大変なことになるのは目に見えやすくわかるイメージがありますもんね。
谷;めちゃめちゃありますね。なので、当たり前なんですけど、安心できるところを紹介しますよね。
精神科の訪問看護ってどんなものか…
-実際に相談から訪問に至るプロセスってどんな感じになるんですか?私含め。イメージできない人って多いと思うんですよ。身体の方で考えれば、医療的な支援が必要な方がいて相談があって医師の指示書をもって、医療的な処置をおこなったりや日々の暮らしの中で必要な療養上の関わりもしていくっていうのが教科書的な部分かと思うんですけど…精神科訪問看護の場合というか谷川さんの支援者としての関わりっていうか...
谷:ホントにやっていることは「対話」なんですよね。なにかをしてあげるとかっていうのはなくて、「対話」を繰り返していくわけなんです。「その人ののありたい自分」像を本人と一緒に見つけていく、それは話を聞きながら、こうかな、こうかなって考えながら。で、病状とか特性とかを持ちながら、どうやってその目標に向かって生活を組み立てていくかっていうことを「対話」する。なので、何するんですかっていったら話しかしないんですよ。でも、変わっていくし、よくなっていく…。
-谷川さんが今言語化して教えてくれることって、人によっては「簡単じゃん!話してるだけでしょ?」って思う人もいると思うんですよ。私はちょっと知ってるし、谷川さんと話をしているから理解している部分が多少ありますけど。
谷:めちゃめちゃ難しいです!!
-だと思うんですよ(笑)!精神科のくくりってなんかすごく広いし、グレーな部分もあるじゃないですか?
谷:まず精神の疾患てかなり幅広いんで。それこそ統合失調症だけじゃなく、同時に知的能力障害だとか、アルツハイマー型とか依存症もってたりとかするんですね。どこを優先して、それを考えていくのかって視点になると、例えば、アルコール依存症の人で「オレは一生酒飲んで暮らして、死んでいくからいいんだ」って仮に言う方がいるとして、それやっていきましょうっていうわけじゃないですよね、当たり前ですけど。
「それをやったことによってじゃぁどうなります?」って伺うと、
『そりゃ死にます』って。
「あぁなるほど…」って過去の話とかを聞いていく中で、
『オレ痛いの嫌いなんだよね』って聞けたら、
「そうなんですね!痛いの嫌いなんですね」って聞きながら
「痛い経験ってなんかされたんですか?」
『酒飲み過ぎた時に、肝硬変疑いってなったときにしんどかったんだよな』ってこぼしてくれたら
「そうだっったんですね。飲み過ぎて、肝硬変疑いになってしんどかったんですね」って聞きつつ、
『そうなんだよ』
「しんどくならないように、痛くならないっていう目標がありそうですねー」みたいな感じで話を聞きながら自分で気づいてもらうような関わりをちょっとずつ「対話」の中でしていくんですよね。
-はいはい。
谷:それで、ちょっと関わりが進んでいくと、
『お酒をやめた期間がすごいしんどかったんだけど、体調は少し楽になったんだよねー』って話になると、
「ってことは楽になる回数が多い方が目標につながっていくんでしょうか?」ってその事実を共有しながら、目標にむけて関わっていくんですよね。だから、さっき簡単に言いましたけど、ちょっとずつちょっとずつ設定に何ヶ月も時間をかけていくんです。精神科訪問看護って、その人のQOLを下げずに、ありたい自分をいっしょにみつけて、自己選択と自己決定ができるようにっていうことにつなげていくっていう。なので酒飲みだから酒飲んで体調崩していいって訳ではもちろんなくて。
一見感覚でやれちゃうようにみえるんですけど、これには本当に知識とか経験がないとちょっと難しいですよね。話を聞くのが上手なんですよねーって人も知識がないと絶対失敗するんですよね。
-そうですよね。
谷:で、僕も今1人じゃないですか?LIC訪問看護での精神科は。だから、これも他のメンバーを増やしていかないといけないんですよね。私も絶対どこかで「訪問を拒否される」ってことがあると思うんですよ。それはもう反応として出ることが想定できてるんですよね。なので、私以外でもシェアしながら対応できるメンバーが必要なんですよね、精神科のスタッフとして。
-そうですよね。家族関係もそうですけど、やっぱり関係が近くなっていくと関係性上の不健康な部分がでてきたり、第3者的な関わりが必要になる場面ってありますもんね。私も「たまれ」界隈では、他の人がフォローしてくれるからいいっですけど、人によっては「口うるさいおっさん」っていうだけの役割ですからね(笑)今の谷川さんの、「対話をしながら、ありたい自分を一緒に探ってく」みたいな話を聞いて、なんかその人自身が経験していることとか、体験したことがなんか自分の中に一貫して収納されていなくて断片的だったり散り散りに格納されて、体験したことがモヤの中に入っちゃってるようなイメージで、それを「こうだったね」とか「こういうのは嫌だったね」「でもこういう見方もあるんだね」とかっていう対話の中でピースを集めながら…って自分自身も重ねて理解しました。
谷:本当にそうで。それは「本人の言葉」と事実と経験を活用するってことですよね。だから、僕らが「こうだ」みたいなことは絶対にないんですよね。相手の中にあるなにかを出してもらったり、気づいてもらったりして、それをいっしょに共有していくっていう…。だからこそ、はじめの「ありたい自分」を設定するっていうことが、長く時間がかかることもあるんですけど、それをしっかりやるっていうことが大事になってくるんですよね。
– 私自身はすごく興味のある部分なんですよね。でも、コミュニケーションっていう広い意味合いで私は私なりの経験をベースにやっている現状なんですけど、こういう部分を今までそんなにしらなかった人や、支援者や医療や福祉領域の人に引き出しを増やしてもらう意味でも知ってもらう機会を増やしていきたいですよねー
中編の今回は谷川さんが思い描く、「地域」や「まち」のイメージや、精神科の看護師としてのどのようなことをしているか、またどういう考え方をしているのか的な話を聞けた気がします。。後編では、とはいえ40代半ばでチャレンジに踏み切ったもの大変だったことも聞きつつ、1年経ってみて改めてみえてきていることことや未来の話もできたらなーと思ってます。
※LIC訪問看護リハビリステーションでは2024年3月31日現在、精神科訪問看護のスタッフを絶賛募集しています。ご興味のある方は、オンラインでも採用説明会があったりもしますので、申し込みフォームからお問い合わせしてみてくだいね!!また、一度、谷川さんやFLAT STAND 和田に話聞いてみたいって方は、FLAT STAND のinfoメールに、聞いてみたいことを記入の上、連絡してみてくださーい!!( お返事に時間がかかることもありますのでご了承ください)
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『the town stand FLAT (FLAT STAND)』
2016.6月にOPENしたコーヒースタンドとコミュニティスペース機能をMIXした「まちのセカンドリビング」を目指したコミュニティカフェ。まちに暮らす人が1杯のコーヒーやワークショップなどのイベントを通じて、人やコトに出会い、関係性をつくり育んでいくための出入り口の役割を担うべく、さまざまなな活動を展開中。
運営は、訪問看護ステーション/居宅介護支援事業所を運営する株式会社シンクハピネス。
*フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん(前編)
*フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん(中編)
*フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん(後編)
◆過去のインタビュー記事◆
フラットインタビュー vol.9 LIC訪問看護リハビリステーション 谷川さん
フラットインタビューvol.8 RAFNIST(F.F.P.)宮崎さん、佐藤さん
フラットインタビュー vol.7 LIC訪問看護リハビリステーション 黒沢さん
フラットインタビューvol.6 あそびのアトリエzucco rocca みずぴー
フラットインタビューvol.5 Hi PRESS 平田有輝恵さん
フラットインタビューvol.4 ケアマネジャー石田英一郎さん
フラットインタビューvol.3 パティシエ 加藤薫さん
フラットインタビューvol.2 茶リスタ小山和裕さん
フラットインタビューvol.1 木彫作家 馬塲稔郎さん